2014年6月12日木曜日

ドビュッシー 「子供の領分」

ドビュッシーが愛娘シュシュ(愛称。キャベツちゃんの意)のために書いた、「子供の領分」。
技術的には易しいですが、魅力的な作品です。
ダブル不倫の末エンマ・バルダックと結婚し、43歳にして初めての子ども、しかも女の子をもうけたドビュッシーは、このシュシュちゃんを溺愛していました。
この曲集のはじめに、シュシュへの献辞が書かれています。その日本語訳が、かなり色々なのです。
・かわいいシュシュへ(これは全部共通)、後に続く「者」への父の優しい言い訳を添えて
となっていたり、
・後に続く「曲」への父の優しい言い訳を添えて
となっていたり。
どっちにしろよくわかりません。
ありゃりゃ、お父さんこんな曲を作ってしまったよ、みたいな意味?と、長年勝手に解釈していたのですが、最近ある本を読みまして、その謎が私なりに解けました。
その本とは、マルグリット・ロン著「ドビュッシーとピアノ曲」。
ロン・ティボーコンクールの創始者であるフランスの女流ピアニスト、マルグリット・ロンが、ドビュッシーに直接教えを請うた体験を綴ってある本です。(どうして今まで読んでなかったのか我ながら不思議です。)
とにかくその中に、この曲集の事が書かれてあって、そこでは「父の心からのお詫びをこめて」と、訳されていました。
あ、これだ。
と、思いました。
tendre を、優しいと訳すからわからないんだわ。
シュシュが産まれた時、ドビュッシーは友人に、「この喜びで私はうろうろするばかりで、なすところをしらないありさまです」と打ち明けているそうです。
つまり、どれだけ愛しても愛しきれないほどの我が子に、どうすることもできない自分の無力さを感じながらも、それでも自分にできる唯一のこと、「作曲」をしてしまったよ、という意味なのかなあ、と思います。
シュシュは後にジフテリアで、14歳にして亡くなってしまいます。ドビュッシーの死後わずか一年。
それを考えると、なんだか切なくなってしまいます。


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